〜杵藤エリアくみかつスタッフおすすめ〜 令和元年8月の佐賀豪雨で、武雄市内の多くの住宅が浸水被害にあい、地元の人間が中心になって支援活動を行ったのが「おもやい」の始まりです。高齢者が多い地域のため、浸水した自宅を前に呆然とする方も多く、最初は片づけなどの作業を個人的にお手伝いしていました。おそらく、私と同じように活動している人、支援したいけど何をしたらいいか分からない人がいるはずだと思い呼びかけてみると、30~40代を中心に約30名が集結。水害発生の1週間後にはチームを発足し、災害ごみの片付けや清掃・消毒作業、支援物資の配布など地域の皆さんの生活再建をお手伝いしました。 実は、佐賀に移り住む前まで災害救援支援に携わる団体に所属していたので、その経験が大いに役立ちました。とくに災害の初期は行政の対応を待つだけでなく、住民同士の連携が地域を守ることにつながります。互いに声を掛け合い、支え合うためにも、顔の見える関係を地域内でつくっておくことが大切です。 ご存知のとおり、武雄市は令和3年に2度目の浸水被害を受けました。家を修理し、家具などを買い直して、ようやく落ち着きを取り戻してきた矢先のことで、あの時はみんな心が折れそうになりました。グラウンドに山積みされた廃棄される電化製品が、新品ばかりだった光景は忘れられません。 私たちの活動は、被災世帯へのお手伝いから始まりましたが、次第に日常的な暮らしの困り事でも相談を受けるようになり、活動の幅が広がっていきました。例えば、生活困窮家庭に向けての食品・日用品の配布、子どもの学習塾や地域食堂を開くなど。「この地域にあったらいいな」というみなさんの声に答えながら、ひとつずつ事業化していきました。 ちなみに、防災関連では出水時期にあわせて啓発イベントを実施し、災害が起きれば支援活動として福岡・大分・熊本・宮崎など県外へも出向しました。能登半島地震災害による復旧支援活動には、現在もスタッフを派遣中で、現地の団体と連携しながら活動を続けています。 もし災害が起こっても、家が心配だから避難しないという方がいらっしゃいますが、身の安全を確保することが大前提。自然災害は、これまでの経験則だけで推し量れないですから、早期避難をしてほしいです。そして、いざという時に慌てないためにおすすめしているのが、簡易トイレの体験です。災害時のトイレは大きな課題で、使い方や凝固剤のかたまり方を事前に知っておくだけでも十分です。おもやいでは、水害の大変さを知り、少しでも防災への意識を高めてもらおうと防災ブックを制作しました。武雄市内で被災した方の体験談を盛り込んだ内容で、防災イベントなどで無料配布しています。 今年は法人化して5周年を迎えます。災害時の支援はもちろん、地域のちょっとした困り事にも手が届くように、関係機関や地域のみなさんと“おもやい”しながら活動を続けていきます。 ※「おもやい」は方言で、「分かちあう・共有 する」という意味です一般社団法人 おもやい 武雄市北方町志久1759(地域共生センターそよぎ)TEL.0954-33-0444〈インタビュー:杵藤エリアくみかつスタッフ/文責:福地〉能登半島地震支援活動2一般社団法人 おもやい 代表理事 鈴木隆太さん地域食堂「そよぎ de ごはん」1975年愛知県生まれ。阪神・淡路大震災を契機にボランティア活動を始め、災害救援支援に長年携わる。2010年、妻の実家の東禅寺を継ぐため佐賀へ。2019年佐賀豪雨を機に「チームおもやい」を発足し、現在は一般社団法人として活動を続けている。大切なのは顔が見える地域とのつながり地域の声にこたえながら日常の安心を予測不能な自然災害に備えよう防災から地域の困り事まで、“おもやい”で解決防災から地域の困り事まで、“おもやい”で解決
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