2 20年前、母が認知症になったのをきっかけに宅老所を開設。父には身体介護が必要で、シングルマザーの私が働きながら両親を介護するには「これしかない!」と思っての決断でした。認知症になると性格が変わってしまったり、周りから色眼鏡で見られたりしますが、「もともとは優しい人やったよ」とその人の人柄を理解してくれるのが地域に根差したデイサービスのいいところ。現在は宅幼老所として、地域の子どもたちが遊びに来たり、スタッフが子どもを連れて勤務をしたり、年齢に関係なくみんなが集える大切な場所になりました。民家を改築した施設は、自宅にいるような雰囲気そのもので、心がつながる介護サービスを実現できていると思います。 利用者さんにはスタッフと一緒に茶碗をふいてもらったり、洗濯物を畳んでもらったり、できることをやってもらっていますが、研修に来ていた西九州大学の看護学生さんに「ここでは皆さん生活をされています」と言われたときは嬉しかったですね。入所後に元気になられる方も多く、最高齢は106歳の私の叔母で、武雄市の女性最高齢でもあります。利用者さんのご家族から「あんたんとこに行ったら、あのばあちゃんのごと長生きすっとやろ」と言われるようにもなりました。 介護に携わる人たちに伝えたいことの一つが看取りです。私は13年前、17歳だった息子と母、叔母の4人で父を看取りました。大切な人を家族で看取る素晴らしさを経験し、臨終の立ち合いや遺族のケアを行う看取り士の資格も取得しました。看取り=怖いと思われるかもしれませんが、その人の人生の最後に「ありがとう」、「ご苦労様でした」と言えるなんて最高のことです。自宅での看取りは難しくても、宅老所など自宅に近い環境の施設であれば叶うはず。介護の先にある看取りを見据えて、うちに預けたいという方も少しずつ増えてきました。実は、利用者さんの多くが友人の親御さんだったり、昔から知っているおじちゃんやおばちゃんだったりするので、できれば最後まで関わらせていただきたいというのが私の願いです。 2023年には、助成金を活用して地域共生カフェ「えみや」をオープンしました。料理が好きだったこともありますが、利用者さんやその家族だけでなく、地域の方が気軽に集える憩いの場をつくりたいと考えていました。オープンから2年が経ち、食事やコーヒーを楽しみながらおしゃべりをしたり、介護の相談を受けたり、子どもたちが駄菓子やアイスクリームを買いにきたり、いろんな年齢層の方々にご利用いただいています。 今春からは、月1回のワンコインの子連れランチ「喫茶ママちゃん」も始めました。小さな子どもがいるスタッフのアイデアから生まれた企画で、ちょっとした遊具も設置できればと考えています。喫茶店としてのご利用はもちろん、認知症の人と家族の会、癒しのサロンなど月一のイベントも開催しています。どうぞ、お気軽に遊びにきてください。 宅幼老所「笑びす」 ■武雄市北方町大字大崎753番地 ■TEL:0954-36-4936 地域共生カフェ「えみや」 ■武雄市北方町大字大崎761番地1 ●TEL:090-3739-6223 ●10:00~17:00 ランチ10:00~14:00(要予約) ●店休日:不定休HP 特定非営利活動法人みつわhttps://ebisu-mitsuwa.com特定非営利活動法人みつわ 代表 荒川千代美さん高齢者社会を考えるボランティアグループを前身に、2005年にNPO法人みつわを設立。武雄市北方町の古民家を拠点に、まるで自宅にいるような環境のなかで宅幼老所や有料老人ホーム、デイサービスなど様々な介護サービスを提供。念願だった地域共生カフェをオープン両親を介護するために宅老所を開所大切な家族の看取りをお手伝い宅幼老所「笑びす」地域共生カフェ「えみや」えみやランチ(日替り)〈インタビュー:大橋/文責:福地〉「えみや」Instagram住み慣れた地域でともに支え合えるデイサービス住み慣れた地域でともに支え合えるデイサービス
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