くすの木 8月号
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フランスのサロン・ド・トーヌ展入選作品く、繍仏(しゅうぶつ)として奈良時代に仏教と一緒に伝来したのが始まりで、奈良県には国宝に指定された繍仏もあります。江戸時代には大奥の女性達の着物に、分かりやすいところでは、お相撲さんの化粧まわしに日本刺繍が施されています。が、多くの方に気軽に日本刺繍を楽しんでもらえるように生地セット済み簡易刺繍枠「カクイチ」を作りました。通常は、台張りという作業で、生地を張る専用の刺繍台が必要ですが、カクイチは持ち運びができる20センチ角のコンパクトサイズ刺繍枠です。刺繍の仕事を始める際に夫が開発してくれたもので、今は体験レッスンなどの教材として全国で多くの方に利用してもらっています。2日本刺繍 いちhttps://www.mayutoichi.com〜神埼エリアくみかつスタッフおすすめ〜「絹糸展示:監修 Office WaDa 和田浩子」〈インタビュー:神埼エリアくみかつスタッフ/文責:福地〉糸を縒りあわせている様子出会いから10年後に念願の弟子入り 日本刺繍との出会いは20歳の頃。当時通っていたお花の先生が、ご自身で刺繍された袱紗を見たのがきっかけです。「すごく大変だから辞めてしまったわ」と言われましたが、その美しさに魅了され私も学びたいと思いました。その頃はインターネットが普及する前で情報も少なく、先生を見つけるのは大変でした。独学でやるにも材料は市販されておらず、念願の弟子入りができたのは30歳のときです。 一般的なフランス刺繍と勘違いされる方も多いですが、日本刺繍は絹糸と絹の生地を使うのが特徴で、片手ではなく両手を使って上下に針を刺していきます。絹糸には縒(よ)りがかかっていないので、髪の毛よりも細い糸を、自分で縒って太さを調整することで、艶やかな美しさと独特の風合いが生まれます。もともとの歴史も古手間と時間をかけて          一針一針丁寧に 日本刺繍には約42種類の基本的な技法があり、それを学ぶだけでも数年かかります。一つの作品を仕上げるまでに、かなりの手間と時間がかかりますが、作業前の準備も大変です。糸は市販されていないので、専門業者に蚕の糸を指定の色に染めてもらうことから始まります。私が保管している赤い糸は約340色ですが、絹糸の色総数は五万色とも言われています。染められた絹糸は糸巻き機を使って、手作業で一本一本巻いていきます。この糸巻きの作業もテンションの掛け具合が難しく、完璧にできるようになるには1年半ぐらい練習が必要です。さらにここから、作品にあわせて糸を10~100本とって縒りをかけ、自分で糸を作ります。手間と時間がかかる作業の連続です佐賀唯一の日本刺繍作家として 日本刺繍を和文化の一つとして伝え残すために、現在、佐賀・福岡・東京で教室を開いており、20代から80代まで全国に約70人の生徒さんがいらっしゃいます。また、県内の小学校や高校など学校に出向いて体験教室も行っています。来年の秋頃には、福岡市で個展を開く予定で、今はその作品づくりにも力を注いでいます。日本刺繍の魅力をたくさんの方に知っていただきたいので、佐賀市兵庫北のアトリエで「体験してみたい」、「作品を見てみたい」という方を予約制で見学を受け付けています。ご興味がある方は、お気軽にお問い合わせください。日本刺繍 いち      代表 古賀 陽子さん1968年佐賀市生まれ、神埼市在住。30歳から日本刺繍を学び、フランスのサロン・ド・トーヌ展(2012)、ポルトガル国際美術公募展(2014)などに入選。2014年に「日本刺繍 いち」を設立。佐賀・福岡・東京で教室を開催し、佐賀唯一の日本刺繍作家として活動中。繊細で緻密で美しい、日本刺繍の世界繊細で緻密で美しい、日本刺繍の世界

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